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動物の脳と人間の脳を比較した場合、何らかの根本的な変化が起きているのだろうか? サカナから両生類へ、両生類からサルへ、サルから人間へという、生物の進化の歴史をふりかえって見ると、それぞれの生物にはその生物の生存にとって必要な固有な「姿勢」というものがあり、人間にも人間として存在し生活する為に必要な二足歩行を基本とする「姿勢」とそれに基づく生活文化があることがわかる。人間の場合、二足歩行により前足が解放されて「手」になり、垂直に立つことから「脳」が活性化されて肥大し、過剰になった脳のエネルギーが「手」に伝えられて手仕事から「道具」を生み出し、そこから「言語」が生まれ、道具と言語の使用により「文化」を築きはじめた、と言われている。確かに、人間にとって二足歩行とは、重力との格闘の果てに獲得した貴重な財産であり、生物の進化史においては奇蹟に近い「姿勢」の実現だったのである。
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こうして、生物の進化の段階を決定しているのはこのような意味での「姿勢」であると言え、「姿勢」は生物の生存の仕方を特徴づける基本的要因の一つであると言える。そして、われわれは、二足歩行という人間の「姿勢」も不変のものではなく、環境の変化によって変化する空間の関数であると考え、人間はいま情報化社会のなかにあって、或いはまた生命科学やロボット工学によるあらたな人工身体の創造とあらたな宇宙時代を迎えるにあたって、環境の大きな変化に直面しており、その為それらに対応するあらたな「姿勢」の創造とその表現を求められている、と考えている。
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生物の進化史を「姿勢の進化史」として捉え直すわれわれの観点からは、最初の両生類、つまり最初に地上に登場した魚として有名なイクティオステガや、肺魚、および最後の魚と考えられているユーステノプテロンが特に興味深い。ユーステノプテロンは川底にあって、急流に流されまいとして耐えるために胸ビレを砂地に入れていたそうで、そこから胸ビレが鍛えられ前足に変化したそうである。そして、イクティオステガはさらにこれらの足に関節を獲得することで歩行を可能にする4本足を獲得し、陸上生活を可能にするための肺呼吸を獲得したそうである。川から地面に最初の一歩を記録したイクティオステガの経験とは、どのようなものだったのか?
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また、コミュニケーションの視点からは人間にもっとも近いサルと言われるボノボの場合、腰にそれまでのサルにはない2本の筋を獲得することで、二足歩行をさらに洗練させたそうである。ボノボは、サルの仲間でもコミュニケーションにもっとも積極的な種であると言われ、つねに他のボノボと身体的接触を行い、前足にモノを持ち、それを恋人に運ぶための一番有利な「姿勢」として二足歩行をより完全なものにしたと言われている。二足歩行の恐怖、或いは至福にふるえるボノボや最初の人間の経験とは、どのようなものだったのか?